残暑厳しい日中、事務所の電話が鳴った。
「下刈り最中、スズメバチにやられました。クロクマ(オオスズメバチ)です。4人中3人やられて、病院に行きました。みんな点滴打っていますけど、一人はちょっと重症です。」
「どこの現場ですか?大丈夫ですか?とりあえず、あとは休養してください。」
「現場はBです。場所はあとで図面をラインします。やつら、羽をぶんぶんささせて・・・あの光景が脳裏から離れません。ほんと、怖いです。恐ろしいです。」
「わかりました。無理はされないでください。最悪、下刈りが完了しなくてもなんとかします。」
次の朝、事務所から知り合いに電話をかけた。
「オオスズメバチの巣の場所が確実にわかりました。いかがいたしましょう?大きな巣らしいですよ。」
「知り合いのハチ採りの匠に電話してみる。少し、待って」
数分後
「匠が午後に行きましょうとのこと。」
「では場所を案内します。」
午後、私は半日の夏休みを取得した。暑い夏休みになりそうである。
ハチ採り匠と合流して現場着 早速ノーガードで巣に近づくハチ採り匠。
まるでケンカ漫画ですぐに倒されるザコのフラグが立ってる感じ。
もしくは普段はおとなしいキャラが実はめちゃくちゃ強いフラグ
巣の周辺と出入りする蜂を眺めて一言。
「2キロってとこやな。蜂も小さい。先週とったやつは6キロあったけど・・・。ちなみに巣は壊滅させたほうがいいんでしょ?」
確実に後者の「めちゃくちゃ強いフラグ」のようだ。
そんなことを言いながら、匠は中学生がよく着ていそうな分厚い「黄色い雨具」を着て、「長靴」を履いて、「お手製のヘルメット」をかぶり、「キンチョール」と「アリの巣コロリ」を持って、戦場へ向かった。
巣穴から出てくる成虫をメッシュの籠に追い込んで捕えて、時折、体に群がる蜂には「キンチョール」でプシューと応戦し、巣を堀りあげ、仕上げに巣に「アリの巣コロリ」をぶっかけて帰ってきた。ものの数分。匠はやはり匠。
ボスを倒すためには「オリハルコンの剣」と「ひかりのよろい」的な装備が必要だと思い込んでいたが、本当の強者は「銅の剣」と「皮のよろい」的な装備でボスを倒せることがわかった。
「やっぱり二キロちょいやな」
匠は巣から出てくる生まれたての成虫を素手の指でつまんで殺しながら、巣をすべて我々に渡して、成虫だけを持って帰った。
残暑の暑いある日でした。
※いただいた幼虫とサナギは理事長と三男がおいしくいただきました。
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